安波さまより婆さま

海の市から市場側へ出ると正面に見える小高い山が安波山です。地元の人は「安波はん」と親しく呼びます。朝ジョギングで登る人もいるし、幼稚園の子どもが遠足でも登りますから大人の足で登山口から15分くらいで頂上です。頂上からは 気仙沼の市内が見渡せます。山が海に迫り 入り組んだリアス式海岸独特の地形と 大島 唐桑半島 また気仙沼ならではの漁船の並ぶ湾を見下ろせます。安波はんは北上山系の東端で、連なる山並みを竜脈と呼ぶことから山頂には竜のモニュメントがあります。今は5月5日が「安波さんの日」となりましたが、旧暦の3月27日は安波はんの祭典でした。私たちが小学校のころまでこの日、気仙沼小学校はお休みとなりました。みんなでお弁当を持って山に登るのです。途中の少しでも平らなところは敷物をしいて、お弁当を広げる人 人 人です。我が家では、この時期 北洋のサケマス漁の出漁準備のために富山県や福島県から来ていた船主さんも一緒に大勢で登りました。母の作ったいなり寿司やお煮しめを広げました。小さいころ喘息だったので、みんなについて登るのがやっとやっとで泣きそうでした。叔母が小さいころは「まあだ安波はんになんねぇのに、スカートはいでだめだ」と母親が言ったといいます。安波はんの日は春になる目印の日でした。
長い間漁をした漁船は、沖から戻ると安波はんのてっぺんが先に見え始め 帰ってきたことを実感するそうです。波が安らかと書きますから、安波はんの大杉神社は航海安全と大漁を祈願していることがわかります。
昔からこんな言葉があります。「安波さまより婆さまいい 銭んこの無ぇどぎゃ もらってもいい」自分の家のおばあさんと並ぶほどのありがたさと親しみを持つ、私たちの山 安波はんです。親の財布の薄いことを察してか、我が家の高校生は今朝も学校に行く前に、おばあさんから栄養費だといって500円もらって、走っていきました。
五合目あたりまでは車でも行けます。