土用の思い出

土用というと、思い出します。
気仙沼市内から車で15分くらいのところにとびきりの海水浴場が2箇所あります。本吉町の大谷海水浴場と階上のお伊勢浜海水浴場です。さらに大島に渡ると、小田の浜海水浴場もあります。小学校のころの夏休みの楽しみはなんと言っても海水浴、夏休み中に7回も8回も行って十円玉くらいの色に日焼けし 友達と黒さを競っておりました。
たいていは父親に連れて行ってもらうのですが、朝からせがんでも、午前中は市場の仕事が忙しく、もちろん取り合ってもらえません、大騒ぎの末やっと願いが聞き届けられ出発はいつも3時過ぎでした。父親は、私たちに(いとこと一緒に行くので子供が4人か5人おりました)夕方の海は日中に海水が暖まっているから夕方の海水浴こそ最高のものだと教えていました。
ある日いつものように、やっとつれていってもらったお伊勢浜海水浴場で泳いでいると、びっくり仰天です。ランニングシャツにひざまでの半ズボン 麦藁帽子をかぶった祖父が、防波堤の上に立って大声で叫んでいます。車を運転しない祖父がどうやってここまで来たのでしょうか ものすごく怒っています。(けんいず(健一)のばがやろ わらすたずかまねで自分ばがり泳いでいゃがる)※健一というのは父のことです。子供たちの面倒もみないで・・・という意味です。(今時分は土用波っつの来んだ そんなごども気つけねで、なんさ行ったんだ)祖父は孫が土用波にさらわれるのではないかと心配し、心配のあまり 坂の多い路を1時間以上も自転車を踏んできたのです。土用波の恐れのある日だったのでしょう。昔の人は気象予報など聞かないでも台風がはるか南で発生すると、遠く離れた海岸に晴天でも高い波のうねりが到達することがあるということをよく知っていました。【どうぞお盆すぎの海水浴は油断しないで、楽しんでください】祖父はその日、また自転車を踏んで家まで戻ったのだと思います。あの時はただ驚いたのと、おじいさんが自転車で来たと孫たちは笑っていましたが 今になって本当に祖父に申し訳ないことをしたと、土用と聴くたび思い出します。